お世話になります。えびすい@ALPHAです。
この記事読みました?
これを書いている時点でブクマが136、FBへのシェアが3040なのでかなりの方が目にしたと思います。
結論から言うと、
このGIZMODOの記事は4代前まで遡れる、参照に参照を重ねた記事です。
読者の興味をそそるように、うまい具合に表題と論旨がライターの主観で変化しています。
本家本元の記事は、CNBCが最新のロボット事情を実際に取材して記事と動画で発信したものです。
大元では、アメリカンジョーク的にウケ狙いで入れたであろう極々一部分が、GIZMODOではその部分のみ切り取られ、記事の体裁を装った個人的感想の体で記事にされています。
この記事、ほんとうまく書かれていますよ。
しかし。そんな気持ちは、最後の質問で一気にひっくり返ります。Hanson Robotics社のDavid Hanson博士が、「人類を滅亡させたいかい? お願いだからノーと言ってくれよ」と質問したとき、ソフィアはサラリと返事したんですよね。
(注)ここで、件のロボット・ソフィアの写真が効果的に差し込まれています。
「オーケー。私は人類を滅亡させます(OK, I will destroy humans.)」
Hanson博士は、ブラックジョークを聞いたとばかりに爆笑し、そして動画は終わります。そして僕は大変なモヤモヤを残して、取り残されることとなりました。
あたかも、ロボット研究者の取材中にロボットが人類にとって恐ろしい本音を回答した風ですよね。
ちらっと斜め読みする分には、進化したAIの恐怖を想起させます。
この記事がさらに素晴らしいのは、読者の全てが動画を視聴しない、視聴した読者の何割かは英語力のためにきちんと理解できない、読者のほとんどは引用元なんて見ない、CNBCの動画を挿入してあたかもちゃんとした記事を装っているけどよく読むとあくまでも筆者・清田いちる氏の個人的感想にすぎない(からどんな突っ込みが来ようとへいちゃら)、といったところを利用している点です。
でも、なにがこうなったんだろうと違和感を感じて引用元をたどっていくと、興味深かったので解説してみます。
こちらの1〜5の流れでGIZMODOまで辿り着きます。
1) CNBCの元記事
「Could you fall in love with this robot?」
(あなたはこのロボットと恋に落ちるだろうか?)
2) インタビュー部分を抜粋したCNBCの動画
「Hot Robot At SXSW Says She Wants To Destroy Humans」
(展示会で注目のロボットが、人類を滅亡させたい、と発言した。)
3) CNBCの記事を元にしたCNETの記事
「Crazy-eyed robot wants a family -- and to destroy all humans」
(狂気の目をしたロボットは、家庭を持つことと、そして、全人類を滅亡させることを望んでいる。)
4)CNETの記事を元にした日本語の「ROBOTEER(ロボティア)」というメディアの記事
「AIロボット・ソフィアが「私は人類を破滅させる」と語る」
5)ROBOTEERの記事を元にしたGIZMODOの記事
「笑い飛ばせない……AIロボットが『人類を滅亡させる』と発言」
冒頭に紹介した記事です。
1),2) CNBCの記事の趣旨
人間に似せたロボットはまだまだ不気味に見えるけど、ロボット技術者はそれを乗り越えることができれば、人間とスーパーコンピューターが互いに信頼を高めながら、一緒に仕事ができるのではないかと考え、研究している。
そんなロボット技術者のうち、地球上で最高峰の2チームを紹介するということで、ハンソンロボティクスのハンソン博士と、石黒浩特別研究所の石黒浩ARTフェローの2人に取材しています。
記事は、前半がハンソン博士、後半が石黒フェロー。石黒さんはマツコデラックスそっくりのマツコロイドを作ったことでも有名です。
この記事は、人間らしいロボットがメインテーマです。ハンソン博士の動画は、ソフィアの顔、首から上の部分の人間に限りなく近づかせるための研究成果、動きを紹介するのが中心です。そして、最後のところで例の「オーケー。私は人類を滅亡させます(OK, I will destroy humans.)」のくだりがあるのです。
でもね、これ、記事の文脈とかハンソン博士がやりたいこととかを知った上で見ると、博士がデモンストレーション用に仕込んでいる定番のやり取りにぼくは見えるのですね。もしくは、CNBCの取材用に仕込んだネタか。
それで、博士は、人がジョークを言うときに私は今ジョークを言ってますよって表情でジョークを言うところを、ロボットに再現させたいんだなって。
ロボットがジョークを言った後の笑い方がまだ微妙なんだけど、この微妙という感覚はもう人間に近いものとして比べてるんですよね。
博士も取材者もかなりのところまで来てますよねと思ってる、というニュアンスだとぼくは感じた。
動画の題名は、目を引かせるためにそのクライマックス部分のセリフを使ったんだけど、それが一人歩きしてしまった。
3) CNBCの記事を元にしたCNETの記事
でね、このCNETの記事は、ハンソン博士が作ったソフィアがまだまだ気持ち悪いと思っているライターさんが、ただ動画を引っ張ってきて、CNBCの記事には一箇所リンクを入れているだけの、ロボットディスり記事なんですよ。 'Crazy-eyed(狂気の目)'って単語をタイトルの冒頭につけてね。
この人、取材してません。ただ引用して個人の感想を書いているだけです。
ソフィアの目は、話している人とアイコンタクトできるんですよってハンソン博士自慢の目なのに。
石黒さんは消え去って、"OK. I will destroy humans."がこの記事のクライマックスになるのです。
4)CNETの記事を元にした日本語の「ROBOTEER(ロボティア)」というメディアの記事
このメディア、どこの誰が運用しているのかわからないです。
サイト上に一切の記載がないです。
ドメイン、ROBOTEER-TOKYO.COMを検索しましたが、さくらインターネットによってマスクされています。
以前、駄メディアを見分ける基準を記事に書きましたが、まさにこれに当てはまります。
1. ○ 記事の投稿日時が明記してある。
1. × 文章の執筆者が明記してある。
1. △ 記事の配信元がリンクしてある。
1. - 広告記事は、読む前に広告であることがわかるように明記してある。
1. × フッターかヘッダーから運営会社情報へリンクがある。
この記事の参照元は、CNETなので、当然ディスり部分が記事になっている。
5)ROBOTEERの記事を元にしたGIZMODOの記事
この記事で、ソースをROBOTEERの当該記事として表記しています。
あくまでソースですね。
当然、ターミネーター云々やチャッピー云々は清田いちる氏が書いた部分です。
そして、冒頭に紹介した記事になります。
ちなみに、清田いちる氏は、GIZMODO初代編集長。ブロガーとしても有名です。
まとめ
調べる過程は、足を突っ込んだ川が以外と深かった感じと似てますね。
GIZMODOうまいな、というかこんな感じで煽る文書(メディアの記事として読んでしまったら負けですね)書いて、PV増やすんですね。
CNBCの記事から明後日の方向に飛んでいるので、CNBCの記者が知ったらいい気はしないんだろうけど、怪しいサイトと動画を見た個人の感想ですやんって言えるからね。
でもなんか気持ち悪い。不気味の谷以上に気持ち悪い。
以上。
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